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何だか苦しそうな顔をする兄貴は、俺が初めて見るものだ。なんでそんなにつらそうな顔をしてるのか分からないけど、とにかく俺は劉が心配だった。
「ねえ劉は? 何で俺だけここにいんの? 劉とあのフレデリックって何なの? 一緒に居るんだろ? 知ってるなら居場所も分かるんだろ? 行こうよ兄貴!」
胸の上に乗ったままの兄貴の腕を掴んで言えば、僅かに首を振るのが見えて俺は頭にカッと血が上るのを自覚した。
「何でだよ!! 連れてってよ兄貴! 居場所分かってんだろ!?」
「要、よく聞け。あの男は…フレデリックは、俺やお前がどうこう出来る相手じゃないんだ…。見つかった以上は…どうにもならない…」
「何だよそれっ!! どうにもならないってどういう事!? 警察は!? 警察呼ぼうよ! だってこれ誘拐だろ!?」
フレデリックに取り上げられたスマートフォンは、ちゃんと俺の上着に戻されてた。ポケットを探って俺がスマホを取り出すと、今度は兄貴がその手を止める。
「やめておけ要。一時しのぎにもならない。もし、運よく警察があの男を捕まえたとしても、すぐに放される。それに、そんな事をすればそれこそあの男にとっては劉が邪魔になる…分かってくれ…」
「じゃあどうしろって言うんだよ!! このまま劉を放って置けって兄貴は言うのかよッ!!」
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