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兄貴に怒鳴ったところでどうにもならない事くらいは分かってるけど、でも俺には兄貴しかいなくて。その兄貴が動いてくれなきゃどうしようもないって事実が、もの凄く俺は悔しかった。
「焦る気持ちは分かるが、少し落ち着け」
「ッ…」
「いいか要、絶対に警察には連絡するな」
「それって…兄貴がヤクザだから? 自分たちが捕まるのが嫌って事…?」
言っちゃいけないって、頭では分かってる。でも、それ以外考えられなくて俺がそう言えば、兄貴は困ったように笑った。
「俺が捕まって、劉が戻ってくるならいくらでも捕まってやるよ要」
「ッ……ごめん…」
「お前には想像もできないだろうが、大事にすれば間違いなくあの男はすべてをなかった事にする。俺たちが何を言おうが、証拠も何も残さずに事を終わらせる。俺たちとあの男は、住んでる世界が違う。頼むから聞きわけてくれ。打てる手は打つ。お前が下手に動かない限り、やれるだけの事はしてやるから」
そう言う兄貴の顔は難しそうで、俺には頷く他ない。
「信じていいの…? 劉の事、見捨てない? 兄貴のボスがあの男の味方でも、兄貴だけは劉の事助けてくれる?」
「若は…」
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