恋、しちゃいました。

60/131
前へ
/131ページ
次へ
 色々考えながらフラフラと歩いてれば、そこが新宿だって事は分かった。新宿には、兄貴のいる組もある。兄貴の言う事を聞いてるみたいで腹は立つけど、取り敢えず警察に電話するのは最終手段にしておこうと思った。  アテもなく歩いてれば、人間不思議なもので慣れた場所へといつの間にか足を向けている。そう、俺の足は勝手に職場に向かってた。  間宮と別れて劉を追いかけたのは夜の早い時間。それから今の時間を見れば、そう長く意識を失ってた訳じゃない。今日はバイトが休みだから職場に向かう必要はないんだけれど、何となく知ってる風景を見てる方が落ち着く。  相変わらず人が多い街を歩いていれば、目の前に一台の車が停車したところだった。そこは、間違いようもなく俺の職場のビルの前。その車から降りったのは、ハヤトさんだった。  何かを考えるよりも前に、俺は口を開いてた。 「ハヤトさん…っ!」  名前を呼んで駆けよれば、優雅な所作で振り返ったハヤトさんの表情が柔らかく笑みを象る。 「設楽さん、ですね? これからお仕事でしょうか?」 「あっ、いえ…今日は休みなんですけど…」     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加