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「ちょうどいい。隼人、その男を連れてこい」
「よろしいのですか?」
「二度言わせるな」
そう言って店の中へと入って行ってしまう須藤さんに、ハヤトさんは小さな溜息を吐いて俺を見た。なんだかそれだけで居心地が悪くなってしまうのは、俺自身がハヤトさんや須藤さんとは釣り合いもしない一般人だからだろう。
―――でも何で…須藤さんは俺を連れてこいってハヤトさんに言ったんだろう…。
取り敢えずついていけば分かるかとそう思い直した俺は、困ったような顔をしながらも『こちらへどうぞ』と、丁寧なハヤトさんに促されて店の中へと入った。
いつも働いている自分の職場。てっきり内勤室へと連れていかれるものだとばかり思ってた俺は、ハヤトさんの立ったドアを見て目を見開いた。そこは、VIPルームと呼ばれる部屋だ。
この店には、あらゆる場所がカメラで監視されている。だからもちろん、俺がハヤトさんに連れられて店に入った事も、店長は知ってる筈だ。そして現在、滅多に足を踏み入れる事のないこの部屋に俺が入ったという事も。
―――大丈夫かな…、俺、クビになったりしないよね?
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