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目の前で繰り広げられる会話が分からないほど、俺は馬鹿じゃなかったらしい。それに、須藤さんにダメ元で声をかけたのは、どうやら無駄じゃなかったみたいだ。
席を立った須藤さんは、すれ違う時に少しだけ俺の前に立ち止まって言った。
「物好きだな。知ってると思うが、あの男と劉は、国は違えど同じようなものだ。気を付けろよ」
―――え? どういう…事…。
国は違えどと、そう言った須藤さんの言葉が、頭の中をぐるぐると回りだしたけれど、当の須藤さんはハヤトさんを連れてさっさと部屋を出て行ってしまった。
―――中国の…ヤクザって事…? え、待って…。
須藤さんが俺に嘘を吐く必要はない。って事は、きっとそれは事実な訳で…。
ふらふらとよろめきそうになってれば、いつの間にか辰巳さんが隣に立ってて俺は慌てた。兄貴ほどじゃないけど、この人も大きいから、正直近くにいると怖い。
―――そういえば、あの金髪の人も大きかったな…。劉も、俺より全然大きいし…。
やっぱりそういう、何というか危ない職業っていうのは、躰が大きくないと出来ないんだろうかとか、そんな事を考えてしまう。
「あっ、あの…っ」
「設楽弟。お前、名前は?」
「え…あの、要です。設楽要…」
「ミコトにカナメか。なんか似てんな」
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