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可笑しそうに笑う辰巳さんが、俺にはよく分からなかった。だって、確かに漢字一文字で同じだけど、ミコトとカナメが似てるとは思えない。母音すら違うのに…。と、そんな事を思ってれば、もの凄く近くから顔を覗き込まれて俺は飛び上がるほど驚いた。
「はぅあ!?」
「なるほど。犬だな」
そう言って、何が面白いのか喉を鳴らすみたいにして笑う辰巳さんが、俺は増々分からなくなる訳で。信じられないと言って自分から離れたはずの兄貴に早くも助けを求めたくなったことは言うまでもない。
と、そこまで考えた時だった。確か、フレデリックと名乗った男は、兄貴のボスも知ってるって言ってた。しかも仲が良いって、そう言ったんだ。
「ぁ、あのっ!!」
「はぁん?」
「ふっ、フレデリックって…金髪の人…ご存じないですかっ!? 劉がっ、その人に誘拐されて!!」
「ああ?」
―――俺の馬鹿っ!! 仲良いっていうのに誘拐とか絶対俺よりそっち信用するに決まってんじゃん!!
辰巳さんの低い声にそう、思ったところで後の祭りで。
「ぃいいゃあのっ、ですね…っ、一緒に…っ! 劉とっ、そのフレデリックって人が…一緒にいて…っ」
慌てて取り繕う俺は、完全に涙目だった。だって本当にこの人の威圧感半端じゃない。兄貴よりも大きい気がするんだ。そんな辰巳さんに舌打ちをされて、俺は飛び上がるほど肩を震わせてた。
「ごっ、ごめんなさいッ! でも…でも劉に会いたいんです…っ、会って俺…話しなきゃいけなくてっ」
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