81人が本棚に入れています
本棚に追加
「話ってな…。お前、あれが何だか分かって言ってんのか?」
「あ…れ…?」
「劉だよ劉。ったくめんどくせぇなお前、兄貴呼んでやっからちっと大人しく座っとけタコ」
ビシッと、額を指で弾かれて、俺はその場にへなへなと座り込んだ。もの凄く痛いけど文句を言えるはずなんてなくて、ジンジンと痺れるようなおでこをそろそろと擦ったら、余計に痛くて涙が出てくる。
情けないって分かってるけど、それよりも今は、須藤さんの言葉と、辰巳さんが言った意味をちゃんと考えなきゃいけない。
『あの男と劉は、国は違えど同じようなものだ。気を付けろよ』
『お前、あれが何だか分かって言ってんのか?』
俺は、もの凄い思い違いをしてたんじゃなかろうか。確かに劉は、兄貴と同じようなものかもって思ったりはしてたけど、もっと違う…、そう、須藤さんの口振りからしたらそれは日本のヤクザじゃなくて…。
中国にヤクザがいるのかは知らないけれど、チャイニーズマフィアとか、中国マフィアとか、そんな名前なら俺だって聞いたことくらいはある。
―――劉が…、そうなの?
訳が分からなくなってくる。兄貴はヤクザで、辰巳さんもヤクザで、劉は中国の…そのマフィアなんだとしたら、一緒に居るフレデリックって何なのって思う。
最初のコメントを投稿しよう!