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路地で見た劉は、フレデリックに腕を掴まれて嫌がってるようだった。でも、払い除けられなくて、それでその後、俺の事覗き込んで名前を聞いて、首を絞められたんだ。
―――その後は? 首絞められて、何で俺、兄貴のとこにいたんだろう…。
俺が床にへたり込んでても、辰巳さんは何も言わなかった。ただどこかに電話をかけて…たぶん相手は兄貴だろうけど、相変わらずぶっきらぼうな口調で今すぐ来いって、店の名前を言っただけだ。
―――あんなこと言って兄貴のとこから出てきたのに…、結局兄貴に来てもらわなきゃどうにもならないなんて…。何してんだろ俺…。
大声を上げて泣いたらスッキリするかなって、そう思ったけど、さすがに辰巳さんにまで呆れられるだろうなって思ったら出来なかった。それでも悔しくて、情けなくて、ボロボロと溢れてくる涙も止められなくて、俺は床の上で握り締めた拳をずっと見てる事しか出来なかった。
兄貴がその場に姿を現したのは、ものの五分くらい後の事だった。むしろ店の前に待機でもしてたんじゃないかってくらい早い。部屋に入ってきた兄貴は俺の姿を見つけて、何を言うよりも早く辰巳さんに深々と腰を折った。
「手を煩わせてしまって申し訳ありませんでした」
「頭上げろ。つぅかお前、フレッドんとこ乗り込んだのか」
「ッ……はい」
「じゃあそこのガキの言ってっ事も間違いじゃねぇんだな」
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