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俺に向かって顎をしゃくる辰巳さんに、兄貴は静かに口を開いた。
「確かに、その場には劉も居ました」
「転がってねぇだろうな」
「今は…分かりませんが。要を引き上げる時に機嫌を損ねたでしょうから何とも」
兄貴の言葉に、辰巳さんは大きく長い息を吐いて、組んでいた脚を下ろすと同時に立ち上がった。
「案内しろ」
「はい」
目の前で交わされる会話の意味が分からない。分かるのは、俺だけ何も知らないって事だ。辰巳さんも兄貴も、劉の事もフレデリックってあの金髪の男の事も、ちゃんと知ってる。なんで二人が一緒に居るのかも。
俺を置いてあっさりと部屋を出ていこうとする二人に、俺は思わず声をあげた。
「待って…っ、待ってくださいッ!! 劉のところに行くなら…俺も連れていって…」
兄貴じゃなくて、俺が辰巳さんの脚に縋りついたのは、兄貴だけだったら辰巳さんはきっと置いて行ってしまうって分かってたから。兄貴に俺の事をどうにかしろって、そう言って居なくなってしまう。
「蹴り飛ばされてぇのか?」
「ッ…」
「申し訳ありません。要、手を離せ」
「嫌だッ! 俺もっ、連れてってよ兄貴…っ!!」
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