82人が本棚に入れています
本棚に追加
「気を遣う必要はない」
どことなく違和感の残る発音に、相手が日本人ではない事に気付く。
「あの、名前…教えてもらっていいですか? 俺は設楽要っていいます」
「劉国峰(リュウクオフォン)」
「りゅ…りゅう…こう…んあ?」
「日本語の発音だとリュウ・コクホウになるな。劉でいい」
中国語の発音などまったく出来ない俺に、劉と名乗った男は小さく笑いながらそう言った。その笑顔がもの凄く優しくて、思わず顔が熱くなる。
同じ男だっていうのは分かってるけれど、劉は綺麗というか…そう、美人だ。中国風に言うなら麗人とでも言うのかもしれないけど。
切れ長の涼し気な目に少しだけ赤い唇。陶器みたいに白い肌に、黒く艶やかな長い髪がとてもよく似合ってる。立てばそれなりに身長はありそうだけれど、男としては華奢なんじゃないだろうか。
「劉さんは…その、兄貴とはどういう関係? まさかとは思うけど、その怪我…兄貴がやったんじゃないよね…」
「この怪我は、私の過ちの代償だ。お前の兄に負わされたものではないから安心しろ。むしろお前の兄は、善意で私の面倒を見てくれている」
「そっか…ならよかった…」
劉の答えに、俺は思わずほっとした。
最初のコメントを投稿しよう!