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蹴られたって絶対に離さないと、そう思いながら必死に辰巳さんの脚にしがみ付いた。呆れられても、馬鹿にされても何でもいい。置いて行かれるのだけは嫌だ。
いつ蹴られるのか怖くてギュッと目を閉じていたら、大きな溜息とともに辰巳さんの声が降ってくる。
「おいガキ、歯ぁ喰いしばっとけよ。な?」
「ッ!!」
突然の浮遊感と、遠心力。驚く暇もなく背中にドンッと何かが当たって、一瞬だけ強制的に呼吸が止まる。
「ッが…ぁ!?」
何が起きたのか分からない。ただ分かるのは、背中がめちゃくちゃ痛いってのと、俺の手が今はもう何も掴んでないって言う事だけだ。置いて行かれるって、そればかりが気がかりで、慌てて背中を押さえながら動こうとすれば、いつの間にか目の前にいた辰巳さんに頭をがっちり掴まれた。
「お前、馬鹿なのか? 誰もついてくんななんて言ってねぇだろ」
「へ…?」
「いいかクソガキ。俺ぁガキの面倒なんざみる気はねぇんだよ。してぇ事があんならてめぇの足で立って歩け。分かったな?」
俺の顔を覗き込む辰巳さんの目が、返事は? って、そう言ってるように見えて、俺は大きく頷いてみせた。そしたらふっ…って、呆れたみたいに小さく笑って、辰巳さんが立ち上がる。
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