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もの凄い勘違いをまたしてたらしい事に俺が気付いたのは言うまでもない訳で。挙句にめちゃくちゃ痛い思いもしたけれど、それも全部自分のせいだって思ったらちょっと笑えてきた。
―――悪い人じゃないんだ…。怖いけど…。
結局、兄貴に腕を引かれて立ち上がった俺は、痛む背中を擦りながらヘラッと笑う。もちろん、兄貴にはジト目で溜息を吐かれた。
初めて見た時はドン引きしてた車に乗り込んだ。って言っても、今日は助手席じゃなくて、辰巳さんに先に乗れって言われて後ろの席に座ったけれど。ハンドルを握ってるのは兄貴で、やっぱり運転は丁寧だ。
「しかしお前、似てねぇ兄弟だな。なぁ設楽」
「血の繋がりもないですからね」
兄貴が来る前はなんか似てるって、そう言ってたのに、今度は似てないって言う辰巳さんは、やっぱり俺にはよく分からない人だった。
「お前、劉の面倒見てたんだろ?」
「え…っ、あ…はい…。一週間くらい…ですけど…」
「はぁん? たったそれだけで、そんなに必死になるほど惚れたってのか? しかも中国マフィアに」
呆れたように言う辰巳さんに、俺は思い切って聞いてみる。
「あの…それって…、本当なんですか…?」
「それ?」
「っ…劉が…中国の…マフィアだって事…です」
「あぁん? 何だ設楽、お前何も言わねぇでこのガキに世話させたのかよ」
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