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「ね、ねえ兄貴…。俺…劉と一緒に…どこかに連れてかれてたの…?」
「ああ」
「え…? じゃあアレって…夢じゃ…なかったって…そういう事…?」
俺が目を覚ます直前に見たのは、劉を見捨てた兄貴の姿で…。そんなの現実には絶対ないってそう思ってたのに、事実なんだって分かった瞬間、俺は急速に心が冷えていく感じがした。
口を開くのもなんだか怠いけど、それでも本当の事は聞かなくちゃ納得できない俺は、俯いたまま兄貴に問いかけた。
「兄貴……、劉の事…見捨てたの…?」
「……ああ」
「なんで? 俺の気持ち知ってるくせにッ」
喰いしばるように吐き出せば、兄貴は何も言わなかった。けれど、代わりに辰巳さんが大きく息を吐いて、俺は躰を強張らせる。
「フレッドが何者かなんて、どうせお前見当ついてんだろぅ? 設楽よ」
「はい」
フレッドと、辰巳さんが呼んでるのがあの金髪の男、フレデリックの事だっていうのは分かる。けど、いちいち確認しなきゃいけないような人なのかと思えば、俺はあまり聞きたくなかった。その反面、劉が中国のマフィアだっていうなら、今更なのかもしれないって思うけど。
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