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目の前にいる辰巳さんにしがみ付けば、一瞬だけ変な顔をしてた。それで俺がなんで? って思う間もなく、今度はもの凄い大きな声で笑いだしたんだ。
「え…? なに…?」
「若……」
「ははははっ、…っく、くくっ、ひぃー…おい設楽、お前聞いたかよ? マジでコイツ馬鹿だろう」
「否定はしませんが…」
爆笑してる辰巳さんに馬鹿にされたあげくに兄貴にまで否定されない俺って…。なんだか悲しくなってくる。
そりゃあ確かにそんなに頭は良くないけど、だからってそんなに笑うほど馬鹿にしなくてもいいんじゃなかろうか。だいたい無事に帰って来れたのが奇跡だっていうから俺は劉の心配をしたのに…。と、そこまで考えて俺は、大事な事を思い出した。
―――なんで兄貴が劉を見捨てたかって話だったんだっけ…。それなのに劉の心配してる俺は、確かに馬鹿かもしれない…。
目に涙を浮かべて笑ってる辰巳さんを、思わずキッと睨む。確かに馬鹿かもしれないけど、そんなに爆笑しなくてもいいじゃないかって、そう思いながら。
「おーおークソガキ、てめぇの馬鹿さ加減にようやく気付いたか?」
「っ…気付きましたけど…!」
「それでもお前は、兄貴を恨めんのか? てめぇまで殺されかねねぇ場所まで設楽が行ったのは、お前の為じゃねぇのかよ?」
「ッ……」
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