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それでも、劉の怪我は兄貴と無関係ではないと、そう思う。だって、そうじゃなければ兄貴が劉の面倒を見る筈がない。
―――でも、世話しろって…ホント、いったい何すればいいんだろ…。
他人の世話をするなんて経験のない俺が考え込んでいると、劉がテーブルの上の湯呑を両手で挟んで持ち上げるのが見てとれた。包帯でグルグル巻きにしていてもやはり痛むのか、その顔が僅かに険しい。しかも、手首まで固定されててもの凄く飲みにくそうで…。
「それ、めっちゃ飲みにくくない…?」
「まあ」
「だよね…」
そう言って俺は立ち上がると、ミシミシと軋む床にびくつきながらも台所の戸棚を漁る。が、残念ながら目当てのものはどうやらこの家にはなさそうだった。ふと、ここに来るときに入ってきた路地を出たところにコンビニがあったのを思い出す。
「ちょっと買い物に行ってくるから待っててくれる? すぐ戻ってくるから」
「ああ、気を付けて行ってこい」
劉の言葉は何だか兄貴みたいで、なんとなくこそばゆいというか、気恥ずかしい。実際、兄貴ともあまり話したこともないし、話をしたらこんな感じなんだろうかと思う。
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