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俺はわざとユウのそばを通るようにしてキッチンへと向かう。
お互いがすれ違う瞬間、偶然なのかわざとなのか、ユウの小指と俺の小指が触れあった。
「…………!」
今までで一番心臓が大きくドクンっと跳ね、触れた小指に熱がこもる。
おもわず止まりかけた足をまたまた俺は全神経を総動員して動かし続け、なんとかキッチンの冷蔵庫までたどり着くと、ミネラルウォーターを取りだした。別に喉は乾いてはいなかったので一口だけ飲んで元に戻す。
横目でちらりと見ると、ユウがベッドに這い上がり、そのままパタンと倒れ込んだのが目の端に映った。そしてそのままシーツをかぶり寝る体制にはいる。
よかった。通じたんだ。
俺は心の中でホッと息を吐いた。
あと数時間。ユウの寝顔を見たい衝動を必死で押し殺し、俺はベッドに背を向ける形で座りこむ。姿を見ることは出来なくても、せめて気配を感じ、呼吸の音を聞くくらいなら許してくれるだろう。
微かに漏れるユウの息の音を、俺は全神経を集中してずっと聞いていた。
今の俺にはそんなことくらいしか出来なかったから。
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