Rattus －ラット－

『最終日』

　この十日間は俺にとって忘れがたく、またかけがえのない十日間だったことは確かなんだ。
　最終日の朝食は二度目の自炊。といっても初日のカレーと違って、凝ったものを作るわけじゃない。俺達は、小部屋に用意されていたパンや卵を持ってキッチンに並んで立ち、どちらからともなく作業を開始した。
　俺がトーストを焼き、ユウがベーコンエッグを作る。パンが焼きあがるのを待つ間に俺はレタスをちぎってサラダを作る。ドレッシングはあらかじめ冷蔵庫にあったものを使用した。
　そして食後の皿洗いはユウ。ふきんで軽く拭いて戸棚に並べるのは俺の役目。
　きちんと決めたわけではなかったけど、いつのまにかそんなふうに何故か自然と役割分担が出来ていた。
　それから今日でこの部屋を去るんだからと、いつもより念入りにやった掃除は二人の共同作業。で、その成果と言ってはなんだけど、最後の最後で俺達は部屋の中を監視していたのであろう、監視カメラを見つけた。
　場所は三ヶ所。
　簡易キッチンからトイレ及び浴室の前を越して部屋を覗く方向にひとつ。
　部屋の中央からローテーブルを覗く方向にひとつ。
　そして最後のひとつはベッドの真上。