200人が本棚に入れています
本棚に追加
近づいてきたユウの顔を見て、一瞬、昨夜のユウを思い出した。
鼻先が触れるほど近くにあったユウの顔。髪の匂い。睫毛の長い大きな瞳。
「じゃ…じゃあ、次はこれやろうぜ」
これ以上接近したらなんかマズいような気になって、俺はとっさに手近にあったチェス盤を掲げてみせた。
って、チェス盤?
「……僕はいいけど、ケイってチェスのやり方知ってるの?」
「いや。知らない」
言っておいてなんだが、俺はチェスのルールを知らなかった。
だったらなんでこんなもの選んだんだって思うかもしれないけど、仕方ないだろ。焦ってたんだから。何を手に取ったかなんて、手に取るまでわからなかったんだよ。
「だから、教えて」
後戻りが出来なくて、つい低姿勢でお願いしてみると、ユウはふわりとした笑みを見せて頷いてくれた。
「了解」
ユウはチェスはもちろんだけど、将棋も詳しかった。といってもユウに言わせると、チェスも将棋も基本は同じだから、どっちか知ってれば両方知ってるも同然ってことらしいけど。
でも、どっちも知らなかった俺にとっては、未知の世界だ。
せめて挟み将棋だけでも知ってれば違ったのかもしれないけど、それすら知らない。
最初のコメントを投稿しよう!