『課題②:競争・対戦』

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 近づいてきたユウの顔を見て、一瞬、昨夜のユウを思い出した。  鼻先が触れるほど近くにあったユウの顔。髪の匂い。睫毛の長い大きな瞳。 「じゃ…じゃあ、次はこれやろうぜ」  これ以上接近したらなんかマズいような気になって、俺はとっさに手近にあったチェス盤を掲げてみせた。  って、チェス盤? 「……僕はいいけど、ケイってチェスのやり方知ってるの?」 「いや。知らない」  言っておいてなんだが、俺はチェスのルールを知らなかった。  だったらなんでこんなもの選んだんだって思うかもしれないけど、仕方ないだろ。焦ってたんだから。何を手に取ったかなんて、手に取るまでわからなかったんだよ。 「だから、教えて」  後戻りが出来なくて、つい低姿勢でお願いしてみると、ユウはふわりとした笑みを見せて頷いてくれた。 「了解」  ユウはチェスはもちろんだけど、将棋も詳しかった。といってもユウに言わせると、チェスも将棋も基本は同じだから、どっちか知ってれば両方知ってるも同然ってことらしいけど。  でも、どっちも知らなかった俺にとっては、未知の世界だ。  せめて挟み将棋だけでも知ってれば違ったのかもしれないけど、それすら知らない。     
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