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ユウは、「だったらなんでチェスなんかやろうと思ったの?」と苦笑してたけど、それでもすっげえ親切に教えてくれた。そしてその教え方はとんでもなくわかりやすかった。
ってか、俺、ふだんの学校の授業はここまで真剣に聞いてないし、ここまで必死に理解しようとしてなかった。なのになんでだろう。
ユウの声はすーっと耳に入ってくるんだ。
ユウの話はちゃんと聞いていようって気になるんだ。
ユウのほうだって、こんな素人以前のやつを相手にしてルールを一から教えるなんて、そうとう面倒くさいだろうに、そんな素振りはまったく見せることもなく。
「やっぱ良い奴だな、ユウって。頭も良いし」
おもわずぽつりと口をついて出た俺の言葉に、ユウは照れたような笑顔を見せてくれた。
やっぱり綺麗だ。
昨日みたいな夕陽の効果なんかなかったのに、その笑顔はやっぱり綺麗で。
かなり長い時間をかけたルール説明のあと実行されたチェスの対戦は、当然のごとく俺のボロ負けだったけど、俺は全然悔しくなかった。
なかったどころか、なんだかすっごい名勝負をしたような気分になった。
それもこれも、ユウがちゃんと真剣に対戦してくれたからなんだけど。
そうなんだ。ユウは素人の俺相手に、本気で勝負をしてくれた。一応ハンデ戦ではあったけど、それでも手を抜くこともなく、相手を馬鹿にする言動ももちろんなく。
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