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その時、ふいに心に湧いた気持ちを行動に起こさずにすんだのは、両手がユウの手に握られていたから。
そうじゃなかったら、俺は。
俺は。
何をしようとしてたんだろう。
自分でもよくわからない衝動が心の中を駆け巡る。
「ケイ……?」
「…………」
「ごめんね、ケイ」
無言のまま動こうとしない俺を気にしてか、ユウが不安げに口を開いた。そしてまた一歩、俺のほうに近づいてくる。
どんなに近い距離で見つめても、やっぱりユウは綺麗だと思った。
「なあ、ユウ」
「……なに?」
「本当に、遊びに行ってもいいか?」
「え?」
「このまま無事、十日間過ごし終わったら、遊びに行ってもいいか?」
「ぼ…僕ん家にってこと?」
「そう。いい…かな?」
「いい…けど」
「やった!」
ユウがこくりと頷いたその瞬間。俺達の関係は単なるバイト仲間から友達へと昇格した。
いや、俺にとっては友達以上。親友といってもいいくらい。
それくらい、俺はユウのことを気に入り始めてる自分に気付いていた。
なんだか不思議だ。
どっちかというとユウは文化系で俺は体育会系に属するタイプだ。だからもしユウが同じクラスにいたとしても、特別進んで話をしたとは思えないのに。出会った初日は、今までの俺の友達にはいないタイプの人間だよな、なんて思ってたりもしたっていうのに。
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