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「いやいやいや」
でも、俺は大きく頭を振る。
何を言ってる。ここまで来てもう後戻り出来るはずないだろう。契約書だって交わしたんだし、印鑑も押した。振り込み先の口座だって教えてしまった。
だったら、十日間何が何でも頑張って、二〇万手に入れるしかない。
俺はすーっと深呼吸して顔をあげた。
「…………」
ところで動きを止める。
俺が入ってきた物音に気付いて出てきたんだろう、正面のドアから緊張した面持ちで顔を覗かせているやつがいたんだ。
たぶん、ってかきっとこいつがこれから一緒に実験を行う俺の相方というわけだ。
どう見ても社会人とか大学生には見えないから、年齢はおそらく俺と同年代。高校生だろう。身長は俺のほうが少しだけ高く、体重に関してはあきらかに俺のほうが重いと思えた。
少し大きめの柔らかそうな木綿のシャツを着ているので身体のラインは隠されているが、それでも袖口から覗く腕の細さを見るだけで、充分細身であることだけはわかったからだ。
さらさらの髪。黒目がちの大きな瞳。長い睫毛。白い肌。
かなり中性的な顔立ちだけど、男……だよな。
「えっと……はじめまして。俺は……」
一瞬迷いそうになりながら、確かめるために俺が口を開きかけると、そいつは慌てたように唇の前に指を一本突き立てた。
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