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「そういえば、リストバンド外せるのってこれが最後なんだよな」
「そうだね」
「これじゃあ風呂からあがったあと、服着れないじゃないか」
「下だけならなんとか履けるんじゃない?」
ユウも多少は照れているんだろうか。あんまり俺のほうを見ないままそう言って、浴室のドアを開けた。
ああ、ヤバい。本気でヤバいかもしれない。
俺の視線は、何処を見ればいいのかわからなくて、うろうろと中空をさまよい続けている。これじゃまるで不審者だ。
俺は心を落ち着けようと、一回大きく深呼吸してから、ユウの正面で膝をつき、シャンプーを手に取った。とりあえず何かしてれば気もまぎれるはず。
「じゃあ先に髪の毛洗うか」
「そうだね」
繋がった片手はほぼ使い物にならないから、頼りはそれぞれ自由になるほうの手だけ。俺がシャンプーの液をユウの手のひらに垂らしてやると、ユウはそれをこぼさないように注意して自分の頭の上にもっていく。
髪を洗うのは基本的に当人で。シャワーで流すのは相方の役目。
「これ、思ったよりいい感じじゃない?」
ユウが器用に片手で髪を洗いながら、ふふっと笑った。
どんな大変なことでも、出来る限り楽しもうとするその姿勢は、本当に尊敬に値する。
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