『最終日』

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『最終日』

 最終日は、今までの総まとめを兼ねたアンケートがあるのみ。  初日の課題開始が昼過ぎからだったことを考慮してか、アンケートは午後二時に行うので、それまでは初日と同じく、二人で掃除や洗濯、自分達の荷物の整理も行い、部屋を明け渡す準備をしろという指示だった。  そして二時になったら部屋を出てそれぞれ指定の場所へ行き、最終のレポート提出とアンケートの解答作業。それを確認した時点で実験はすべて完了。本当の終わりになるということだ。 「アンケートねえ。それの解答でこの実験が成功したかどうかがわかるのかな?」 「かもね」  まあ、どっちにしても何も知らされていない俺達にとっては、なにをもって成功か失敗かはわからないから考えても意味ないことなんだけど。  というか、それよりも俺達の、いや、俺の心を占めているのは、これで本当に終わるのかという、苦しいくらいに寂しい気持ちだった。  この実験が始まる前、俺はユウという人間の存在さえ知らなかった。それなのに。今ではもう、ユウのいない世界なんか想像できない自分がいる。  たった十日。されど十日。     
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