***プロローグ***

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***プロローグ***

 それは、高校最後の夏休み。  ずっと続けていた部活も先月の対抗試合を最後に無事引退したし、そんなに無茶なレベルの大学を目指しているわけでもないので、受験勉強を開始するにも少々余裕があるという夏休み。  一番輝いていて、一番好奇心旺盛で、一番無茶なことに挑戦したくなる夏休み。  俺にとってそれは、そんなふうに言える比較的貴重な最後の自由時間だった。  と、いうことで。  っていうのもなんだけど、俺はこの自由時間をなにか有意義に使う方法はないかと思案をめぐらせていた。  せっかくだから何処か旅行にでも行きたいなあ、なんて最初は考えていたんだが、よくよく考えると、いかんせん先立つものが足りない。  ってか、ぶっちゃけ、なかった。  だから、俺は短期間であるていど稼げる簡単なバイトでもないかと思って、本屋に立ち寄ったんだ。  ま、そうは言っても、旅行には行けたらいいな程度の関心だったから、あくせく働きたいなんて殊勝なことは考えておらず、真面目に探すつもりはなかった。何処にも行かないなら行かないで、家でゲーム三昧ってのもいいかと思ってたくらいだ。  ただ、やっぱりそれだとちょっと虚しい。  とりあえず、なにか、をしたいって気持ちはある。  なんて。  そんな軽いノリで俺は一冊のアルバイト情報誌を手に取ってパラパラとめくっていた。  もちろん今言ったとおり、真剣に考えているわけじゃなかったから、特集記事に掲載されている大きめの募集はとりあえず飛ばし読み。  なぜって、高い広告料をかけて真面目に募集をかけているところへ、こんな不真面目なやつが応募するってのは、相手先の企業に対しても失礼な気がしたからだ。  なので、雑誌の端っこ辺りにある小さな記事を中心に目を通す。
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