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一章.雪の森
寒い...
指先は血の気がなく真っ白で、身体は絶えずぶるぶると小刻みに震えている。
一歩一歩踏み出す足の先も既に感覚がなく、今踏みしめている大地の感触もしない。
灰色の空から降り注ぐ白い結晶はただでさえ冷えきった身体を重く、重く、鉛のようにしていく。
呼吸をすれば冷気が肺を刺してますます息はしづらくなり、吐き出す息は空の結晶と同じ真白だった。
『姉さん...待っててね...』
僕はこの深い森に姉を捜しに来た。
僕ら家族の住んでいる町からほど近いこの森は普段は立ち入り禁止になっている神聖な土地だった。
神聖故に立ち入る権利を持たない者が入ると二度と出られないという噂もあり誰も進んで入る事はなかった。
『姉さん、なんでここに来たの...?』
姉がいない事に真っ先に気付いた僕は何故かすぐにここを思いついた。
両親はきっとまだ気付いてもいないだろう。
僕らの親は楽観的な所があって何事も何とかなる、と思っている節があった。
その証拠に僕が医者から命の期限を告げられた時も驚き悲しみはしたがまだ猶予はあるのだから焦らず治療法を探していこうと言っていた。
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