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「驚いた…秋が結婚だなんて」
京香は笑う。
「あんなに気持ちを崩さなかった貴方が、結婚する相手に興味を持った」
京香は葵を見る。
「ただの田舎から出てきた一般人。しかも小悪魔美女?とびきり若いわけでもないし、見たら大したこともなかった」
京香は俺にすがりつく。
「なんで?なんで私じゃないの!?」
こんなに取り乱すのは薬のせいなのか、それとも、彼女の本当の姿なのか…
「葵だったんだ。俺には、葵しか居ない」
これは俺の過去のツケだ。
「京香とはもちろん真剣に付き合ってたつもりだ。でも、結婚を考えたのは葵だけだ」
自分のことを優先にして、上手く立ち回ってたツケだ。
「京香が仕事を選択したこと…賭けなんて気付かなかった。わかってやれなかった。ごめん」
ちゃんと今、伝えないといけない。
「京香は芸能界の先輩で、格好よくて、眩しかった…。その気持ちは別れた後、より感じた」
ちゃんと伝えないといけないのに、頭がくらくらする。
「…雑誌やテレビで見るたびに、負けてられないって思ってた」
頭を振り、意識を集中させる。
「躓いても、転んでも、失敗しても、格好悪くても…そこから逃げない限り…闘いは続いてる…」
アイドルバンドで悔しい思いをしていた時に、京香が俺に言った言葉だ。
「負けるな…京香」
頭がくらくらして、視界が白くなる。
「秋!」
葵が俺を呼ぶ声が聞こえた。
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