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裏口から出て、メイン通りを探しながら走る。
外は雪混じりの小雨が降っていた。
視界が悪い。
葵の姿を探す。
中にはライブに来てくれていたファンに遭遇して驚かれる。
俺はとにかく葵を探した。
暫く先に進むと、人通りの多い中に、数名傘をさした人の姿が目についた。
小雨の中、この国で傘をさすのは外国人が多い…。
そう思って見た相手は前川さんだった。
「前川さん!」
俺の姿に、彼女は驚く。
彼女はスマホを握り締めていた。
「秋さん!どうして?今、着信数に驚いてかけ直そうと―」
「葵は!?」
俺は彼女に迫り聞く。
「えっ、今さっき別れました。もうホテルが見えたから大丈夫だからって、仕事に戻って欲しいとおっしゃって…」
「どこで!?」
「あそこです」
前川さんが道路の向こうを指差す。
真っ直ぐ歩いて階段を下りて、暫く歩くとホテルだ。
俺は目で道を辿りながら葵の姿を探す。
「また直さんから電話―あっ、あの傘差してるのが葵さんです!」
前川さんが指差した先に、傘を差しながら歩く人を見つけた。
「葵!!」
叫んだけど遠い。
気付かない。
道路には車が行き交う。
俺は前川さんを置いて対面まで行こうと走る。
葵の姿を追っていると、その少し離れた後ろに見た姿を見つける。
「…京香?」
それは間違いなく京香だった。
葵が間も無く階段に差し掛かる時に、京香が走り出す―
突き落とすつもりだと察した俺は、道路に飛び出して道を渡る―
車のクラクションの音が遠くなる。
葵は俺が守ると決めたんだ。
京香の方が早くて間に合わない―
俺は突き押された葵の腕を間一髪で取る。
彼女を抱えるようにして一緒に階段の下に落ちた―
葵を掴むまで無我夢中で音なんて聞こえなかったが、階段の下の地面に身体が打ち付けられたと同時に音が戻ってきた。
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