現在 ∞

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直と慎は予定通り翌日の飛行機に乗るために、病院をあとにした。 俺は念の為、3日間の入院をすることになった。 葵とゆっくり話したいのに、面会時間の縛りや仕事関係の話でちゃんと話せない。 事故後2人で話が出来ずで、入院2日目の面会時間を待っていた。 ただ思い通りにも行かず、面会時間トップバッターに現れたのは川邊さんだった。 「川邊さんか…」 「私で悪かったわね」 川邊さんは一通り今後のスケジュールを話してから、椅子に座って本題を話しはじめた。 「貴方のケガは、プライベート中の事故として通すわ」 「悪いね」 「時間も遅くて、夜で、小雨で、視界も悪かったから…人通りも少なかった」 「良かった」 「こんなことになって、私にも責任がある」 「俺の責任だ―。葵は?」 「面会時間を少し譲って貰ったの」 「えっ?」 「紅京香を連れてきた」 予想外の展開。 だが、あのままって訳にはいかない。 「部屋に入れて」 川邊さんは立ち上がって、病室の扉を開ける。 京香が立っていた。 川邊さんは部屋の扉前に立って見守る。 京香はゆっくりと病室に入る。 そして俺のベットの前に立って深く頭を下げた。 「ごめんなさい」 プライドの高いはずの京香が、俺に頭を下げている。 「頭、上げろよ」 彼女は俺の言葉をきかずに、頭を下げ続けた。 「京香、もういいから」 彼女はゆっくり頭を上げた。 「座れば」 近くにある椅子をすすめる。 「このままで」 彼女はベットに座る俺の横に立つ。 「正直、驚いた。ギタリストは手が大事だからって言ってた貴方が、迷いもなく彼女を助けに飛び出てきた…」 京香の言葉に俺は少し笑う。 「大切なのね」 「大切だね。だから…」 俺は真っ直ぐ京香を見る。 「2度と葵に手は出すな。葵は関係ない。恨むなら俺を恨め」
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