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僕の頬から離そうとした彼女の手を、咄嗟に強く掴んでいた。
彼女の驚いた表情を確認する間もなく、手を掴んでいるのとは反対の手で彼女の腰を抱き寄せると、覚悟を決めるようにキスをした。
「すみません……」
離れた唇から落ちたのは、愛の言葉ではなく謝罪だった。
「あれから、もう十年以上経ったっていうのに、私たちは相変わらずイケナイことをしているのね」
伏し目がちに笑う彼女に、僕は居たたまれなくなった。
あの頃よりも小さく感じる体を壊れるほど強く抱いた。
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