Story2

3/37
511人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
 僕の頬から離そうとした彼女の手を、咄嗟に強く掴んでいた。  彼女の驚いた表情を確認する間もなく、手を掴んでいるのとは反対の手で彼女の腰を抱き寄せると、覚悟を決めるようにキスをした。 「すみません……」  離れた唇から落ちたのは、愛の言葉ではなく謝罪だった。 「あれから、もう十年以上経ったっていうのに、私たちは相変わらずイケナイことをしているのね」  伏し目がちに笑う彼女に、僕は居たたまれなくなった。  あの頃よりも小さく感じる体を壊れるほど強く抱いた。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!