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「_去れ。ここはお前のような奴が来る場所じゃない」
彼女が口を開いた。一般的な少女よりは少し低い声。意識して声を低くしているような気もする。目上に対する話し方ではない生意気な淡々とした口調。
言葉を返して貰えた事がただ嬉しく男はまたくしゃっと人懐こい笑みを浮かべた。
「いやぁ…お嬢ちゃんはちゃんと話せるみたいだな。オジサンめっちゃっ安心した。ストレスで声が出なくなる子もいるって聞くから心配だったんだよ」
少女が発した言葉を聞いてはいたが嬉しさが勝り話しかけるのを止めない男。少女が話せるという事も嬉しくて仕方がないといった感じだ。
「私の話を聞いているのか?去れ、と言ったんだ」
男が何故嬉しそうにしているのかも分からず、自分の話を聞いていないような行動にイライラした気持ちを隠そうともせずに少女は口調を強めて男に言葉をぶつける。
「聞いているよ、もちろん。でも俺も目的があってここにいるだよねぇ…。そう簡単に帰れないんだよ」
困ったように笑いながら男はそう言い、少女のいる木に近づこうと一歩足を踏み出した。
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