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しかしいくら浮かれようが、己が同性に惚れてしまったという事実を易々と受け入れるほどの度胸もなく、かと言ってきっぱりとチドリ青年を忘れ去る事も出来ず、昌平は生まれて初めて感じる胸の高鳴り、焦燥に気を揉んでいた。
毎日陽が傾き始める頃になれば海岸へと足を伸ばし、チドリ青年の姿を探してしまう。
彼の青年はいつも砂の上に腰を下ろし、何をするでもなく、ただ海の向こうへひたと目を向け続けていた。彼が何を思い水平線を見守るのか、それが何を意味するのか、何一つとして知らない。ただ、彼がこちらに気付かないであろう距離を置き、隣へ腰かけて同じようにどんよりと灰色に濁る冬の海を見続ける。ただ、それだけで午後が暮れていく。ほんのりと火照る頬を北風が撫で去る。それが何日も続いた。
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