春浅い日

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 田島のことが本当に好きなのだろうか。毎日のように顔を合わせ話をしていた高校時代に比べ、東京に住む田島と大阪暮らしのりさ子。電話はほとんどしない。ただ、夥しい数のメールのやりとりがあるのみ。メールをしていると確かに、楽しい。  田島が仕事熱心なのは、わかった。その仕事に対する姿勢は尊敬している。 けれど、それは田島の一部分にすぎない。どれだけの相互理解が、同級生としての友情が双方にあるのかは本当のところわからない。田島はよく冗談を言ったが、深い部分での会話、特に家族のことなどはうまくはぐらかし、時たま何を考えているのかわからないことがあった。誰にでも触れられたくない部分はあるだろうが、恋人同士なのに、、、と少し不満に思うことがあった。心に嵐が吹き荒れていた青春時代を共に過ごした仲間は、時に友人であり、時にライバルであり、時に戦友でもある。そのことに間違いはないのだが。     
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