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それはいうまでもなく、お互いがお互いにとってかけがえのない特別な存在なのだが、その先は、、、、。若い時の恋愛は、相手に自分を満たしてもらうことで精一杯だった気もする。正解などないだろう。もう、考えるのをやめよう。少し眠気をもよおし、深くソファーに身を沈めた。
「おまたせ。」
見知らぬ男が近づいてきた。
「失礼ですが、人違いではありませんか?」
りさ子が答える。
「旧姓、佐々木りさ子さんですよね?」
「はい、そうですが、、、、。」
「申し遅れました。私、田島佑介の兄の良介です。少しお時間頂けませんか?」
「ええ、大丈夫ですが。」
「この奥のバーで一杯いかがですか。」
「はい、承知しました。」
二人は、ホテルの奥にあるバーへと向かった。
人の多いフロント付近とは違い、バーの客はグループ客が2組とカウンター客が1人いるだけだ。さしてひろくもないバーは、ランプの光があたりをぼんやりと照らしていた。壁には、ランプの形をした影が写しだされていた。
「カウンターでいいですよね。」
田島の兄、良介がそういうと、腰をおろした。りさ子はその横に静かに座った。短いスカートがさらに短くなるのを恐れて、バッグをひざの上におき、その脚を隠した。
「バーボンダブルで。」
良介がたばこに火をつけながら注文する。
「私の雰囲気にあうカクテルをお願いします。」
りさ子も注文した。
「かしこまりました。」
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