春浅い日

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 田島はりさ子の申し出を受け入れ、彼からのメールはとだえた。  半年も月日は流れていただろうか。本当に久しぶりに田島からメールが入った。  「りさ子さん、お元気ですか。僕は今、出張で大阪にきています。   りさ子の胸は高鳴った。電話で再会したとはいえ、またかつてのように時の流れに埋もれていき、ゆっくりと過去の人になるだろうとおもっていたからだ。  「貴女に一度会わないと死に切れない.もう一度会って、またきちんとした形で別れたい。」  田島からのメールだ。なんて悲しいことをいう男性なのだろう。あの涙のお別れは一度で充分だ。   「もう一度、会いたい。」  田島からのメール攻撃に負ける形でりさ子は彼に会うことにした。電話での再会から2年の月日が流れ、りさ子は45歳になっていた。  田島は新作家電のプロモーションで大阪に出張にきていた。  「夕方7時にJR大阪駅の時空の広場で待っています。」  そう返した。   田島に再会すると決めてからりさ子は高校生の時からは比べものにならないほど変わってしまった容姿を少しでもとり戻したいと、エステに通い、高級下着を買い、気になっていたブティックで服を数枚購入した。田島は何というだろう。りさ子は変わらないね、のひとことがききたいためにどれほどの時間とエネルギーとお金を費やしたことか。  「遅れるかと思ったよ。」  仕事を終えた田島が小走りに、額に汗して現れた。高校時代と変わらぬ体型の彼は、グレイのフレッドペリーのポロシャツに身を包んでいた。よく似合っていて好感が持てた。  「ううん。全然待っていないよ。」  水曜日とはいえ梅田は人でごったがえしていた。大阪駅ビルが改装され、ルクアができて間もないのでなおさらであった。りさ子は、しまった!と思った。いつも友人と会うときにはお店を予約しているのだが、今回は忘れていた。
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