戌亥神社

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 初めは狐かと思ったが、今は大きさは全然違うけれど、政宗と引越の時に一緒に連れてきたクロシバの梵天丸に見える。 「マサムネくん、こないで!」  強い口調で言って、背を向けて社の裏へ行こうとした。ところが、政宗はまだ()いてくる。 「ついてこないでってばッ、かえって!」  政宗は言う事を聞かず()いてくる。 「もう、かえれ!」 「キャンッ」  足下にあった石を拾って政宗に投げつけた。それは政宗の頭に当たり、さすがに堪まらず来た道を引き返す。 「フン」  紫織は再び社の裏へ向かった。  この寺に来た時から、自分を背に乗せて遊んでくれた心優しい政宗、ちくりと胸が痛む。  アタシはわるくない。ゆーことをきかない、マサムネくんがわるいんだ……  心の中で自己弁護をする。  神社の裏の林を抜けると開けた場所があり、腰掛けるのに丁度よい石が一つある。  紫織はその石に座り辺りを見回した。社は猪山の頂付近に在り、そこから南西に少し下った所にこの場所はある。  ここからだと、眼下に戌亥寺の墓地と南に広がる田畑や山並みが見える。 「う、うぅっ、うぅうう……」  嗚咽が漏れ、涙が溢れ出た。やがて紫織は声を上げて泣き始めた。  この景色の更に向こうに八千代がある。 「おとうさん、ミック、ゆっぴー、カナ……みんな……みんな……あいたいよ……」     
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