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生まれて初めてした引越と転校。知らない街、知らない学校、そして知らない人たち。
人前では明るく振る舞っていても、父や仲の良い友達と別れ淋しくないわけがない。
小学校で何人か話す子たちは出来たが友達とはまだ言えない。
それどころか、明るく振る舞っている分、クラスでは浮いているような気がする。
かえりたい……
それが紫織の本心だ。
でも、そう言えない事も判っていた。
戌亥寺に引っ越してきたのは、紫織と彼女の姉のためなのだ。
彼女たちには異能力があり、それが悪いモノを引き寄せる。
そのせいで姉は友達を失った、紫織もそうならないように修行をしなければならないらしい。
「でも、おうちへ、かえりたい……」
「クゥ~ン」
背中に温もりを感じた。
振り向くと、いつの間に来たのか、政宗が身体を寄せて悲しそうに紫織を見つめている。
「マサムネくん……どうしてきたの? くるなって、いったでしょ」
「クゥ~ン」
再び淋しげな声で鳴く。
紫織には、自分がいるから泣かないでと言っているように聞こえた。
「どうして? アタシ、マサムネくんにヒドイことしたんだよ? いしをぶつけたんだよ? おこってないの?」
「クゥ~ン」
政宗は顔を近づけると、涙を拭き取ろうとするように紫織の頬を舐めた。
「くすぐったいよ」
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