猪山

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猪山

 紫織が戌亥寺に引っ越して来て一ヶ月が過ぎた。福島の秋は千葉よりも足早に過ぎ去って行く。  赤や黄色のカラフルな木の葉もほとんど枝に残っていない。  政宗の背に乗り、落ち葉に埋もれる猪山を紫織は駆け巡っていた。 「すご~い、しおりちゃん、カーボーイみたい!」 「しおりん、あたしにもマサムネくん、さわらせて!」 「わたしも!」  紫織が一廻りして来ると、クラスメイトが待っていた。 「いいよ、マリーナも、あおいちゃんもどうぞ。クッタンもさわったら?   マサムネくんはおとなしいから、かんだりしないよ」  政宗は子供たちに囲まれて嬉しそうだ。  この三人と仲良くなれたのも政宗のお陰だ。  学校で家に大きな犬がいると言ったら、見てみたいと言われて戌亥寺に誘った。  淋しさが消えたわけでは無いが、それでも以前のように泣く事はなくなっていた。  政宗が紫織の頬を舐める。  彼女は友達と一緒に愛犬を優しくなでた。                                  ─了─
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