635人が本棚に入れています
本棚に追加
ミッションは無事完了。パイの匂いがあまりにも魅力的でお腹をクルクル鳴らしていたからか、
届け先の家の奥さんからお菓子も貰ったし、あとは家に帰るだけだ。
そう思って、来た道を振り返ると道がなかった。
もちろん驚いた。異世界では道も神隠しにあうんだなぁ、と。
遭難したりしたときにはその場でじっとしていた方が助かる確率が上がる、
と前世で読んだ本に書いてあった気はする。
けれど、こういう状況の場合どうなんだろう。
いきなり道が消えてしまった。ちなみに、周りに靄がかかったようになっていて自分が
どこにいるのか分からなかったりする。
そして僕は、泣いた。
いや、この体で四年も生きると、思考とかが体に引っ張られるというか...。
話し方とかもだいぶ子供っぽくなった気がするし。
とにかく、幼児よろしく泣いていた僕は、ふいに誰かに呼ばれた気がした。
涙をぐしぐしと拭ってそちらを見ると、森があった。
...?
さっきまでなかったのに、どーんと大きな森がある。頭の上をはてなマークが舞う。
三秒目を閉じて、開く。変わらずある。
気付かなかっただけで、この森はさっきからあったのかもしれない。
いや、けどこんなに大きな森を見落とすのってありえるのか...?
最初のコメントを投稿しよう!