ミツルギ

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 さんざん泣き喚いて落ち着くと、そういえば自由研究が途中だったなと、ふと思い出した。こんな時に何を・・・とは思ったけれど、二人で一緒に調べ物をしていたから、もし潤ちゃんが戻ってきた時に全く出来上がっていなかったら、きっともう間に合わない。  夏休みは、遺すところあと三日。潤ちゃんとは、もう一週間も会ってない。  今日は少し、調べに行ってこようと自分を奮い立たせて坂を駆けあがった。  夏休みの自由研究で、潤ちゃんと『ミツルギ』のことについて調べていた。その、名前の由来について。  潤ちゃんが消えた前日、お祖母ちゃんが名前の由来を知っているようだと、潤ちゃんが話していたことを思い出す。 「正解を聞く前に・・・ねえ潤ちゃん、名前の由来、なんだと思う?」  そうねぇ、と頬に手をあてて首を傾げる。少し大人びた潤ちゃんに、似合いの仕草だった。 「御剣(みつるぎ)、じゃないかしら。剣のことよ」  そう言いながら、両手で剣を振り下ろすようなしぐさをして見せた。 「木なのに?」 「きっとあの木の根には、剣が絡まっているのよ。その剣が、神剣とか呼ばれるものだったら、素敵よね! そうだとしたら、あの木は立派なご神木だわ」 「でも、神社の境内にちゃんとご神木ならあるじゃない」  うーん、と潤ちゃんが口を尖らせた。かっこいいのに、と少し拗ねて見せる。     
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