ミツルギ

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 変わり果てた姿だけれど、彼女はちゃんと待ち合わせの場所に居た。あの日からずっと、私を待ってくれていた。 ―――ミツルギとは、身吊る木  不意に、潤ちゃんのお祖母ちゃんの声がよみがえる。 「あの木は、身を吊る木。その身は、生者ではなく死者のこと。死んだ人たちがね、この世の未練を断ち切るために、身を吊るして心を落ち着かせるための木なんだよ。昔からね・・・四十九日が済むまでは、死者はあの木に居ると言われているんだ。身を吊るとはいっても・・・実際に死体を吊るしたりしたわけではないよ」  肩を跳ね上げた私を見て、大丈夫大丈夫と、お祖母ちゃんは笑っていた。その笑顔がどこか寂しそうだったのは、潤ちゃんのことを思っていたのかもしれない。 「ね、潤ちゃん。全然、かっこよくなんかなかったね。でもおかげで、潤ちゃんを見つけてあげられた」  あの日、居ないでほしいと願いながら、上を見上げた。そこに潤ちゃんの姿を見た私の絶望がどれ程の物だったか・・・。  潤ちゃんの濁った瞳が、私を見つめている。  ぽたり、ぽとりと雫が落ちる。  ぽたり。  ぽとり。  あの日見つけた潤ちゃんは、花のように血を滲ませていた。獣に噛まれたのか、腐って落ちたのか。  ぱたり、ぱたり。     
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