1人が本棚に入れています
本棚に追加
変わり果てた姿だけれど、彼女はちゃんと待ち合わせの場所に居た。あの日からずっと、私を待ってくれていた。
―――ミツルギとは、身吊る木
不意に、潤ちゃんのお祖母ちゃんの声がよみがえる。
「あの木は、身を吊る木。その身は、生者ではなく死者のこと。死んだ人たちがね、この世の未練を断ち切るために、身を吊るして心を落ち着かせるための木なんだよ。昔からね・・・四十九日が済むまでは、死者はあの木に居ると言われているんだ。身を吊るとはいっても・・・実際に死体を吊るしたりしたわけではないよ」
肩を跳ね上げた私を見て、大丈夫大丈夫と、お祖母ちゃんは笑っていた。その笑顔がどこか寂しそうだったのは、潤ちゃんのことを思っていたのかもしれない。
「ね、潤ちゃん。全然、かっこよくなんかなかったね。でもおかげで、潤ちゃんを見つけてあげられた」
あの日、居ないでほしいと願いながら、上を見上げた。そこに潤ちゃんの姿を見た私の絶望がどれ程の物だったか・・・。
潤ちゃんの濁った瞳が、私を見つめている。
ぽたり、ぽとりと雫が落ちる。
ぽたり。
ぽとり。
あの日見つけた潤ちゃんは、花のように血を滲ませていた。獣に噛まれたのか、腐って落ちたのか。
ぱたり、ぱたり。
最初のコメントを投稿しよう!