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潤ちゃんの口が、一文字ずつゆっくりと動く。何度も、何度も。
『ご、め、ん、ね』
ぐっと溢れそうな心を、唇を噛み締めて押し込める。
真っ白で、血だらけで痣だらけで。首は変な方向に曲がってるし、四肢はひしゃげてるし。身体も今にも崩れそうで、髪もぼさぼさで。お気に入りの浴衣の蝶も泥だらけで。
でも、これは潤ちゃんんだ。私の知ってる、大好きな潤ちゃんだ。
こんな姿の他人が目の前に出てきたなら、叫んですぐに逃げ出しただろう。それどころか、意識を手放していたかもしれない。潤ちゃんだってわかっていても、最初は戦慄っとした。
『ごめんね、またせて、ごめんね』
ぱくぱくと乾いた唇が動いている。
「潤ちゃん・・・」
真っ直ぐで、強くて、でも涙もろくて。私が泣くと、一緒に泣きじゃくって。
我がままで、見た目とは裏腹にけっこうずけずけと物を言うから、だからケンカもよくしたけれど、だからこそ、大好きで、大切で。
ごめんねと、ありがとうを、ちゃんと伝える人だった。
目の前の潤ちゃんの口が、動く。何度も、何度も。
泣きながら見上げていた。もしかしたら、潤ちゃんも泣いているのかもしれないと、もう涙も出ない瞳をじっと覗き込んだ。
ああ、潤ちゃんは本当に、死んでしまったんだ。
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