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そんな筒抜けの解放感と、深い仲間意識は、真新しく制服に身を包む若者たちには少々息苦しく、窮屈だった。
私も、そして彼女にとっても。いつか村を出る未来を、心待ちにしていた。
あの夏休みを、迎えるまでは。
結論から言うと、私は未だこの村に居る。『居る』というよりは、囚われている。
――――彼女と共に。
村に、街灯は少ない。少ないというよりは、殆ど無いに等しい。田んぼの辻にポツンと立つお地蔵様を照らすためにあるようで、夜道を歩くための物ではなかった。夜、暗くなってから出歩くには、手に灯は必須だ。
朝の早い村は、夜、静まり返るのも相応に早い。ずっと、太陽と共に生活を送ってきたような村なのだ。
夏休みを迎える終業式の朝。いつものように日の出と共に起きると、畑仕事を手伝ってから、歩いて四十分ちょっと、学校への道程を駆ける。小学校六年間、この夏休み前の高揚感だけはとびきりだった。
家を出ると広がるのは畑と緑の森。歩く道は辛うじて舗装されている、という程度のガタガタの小道だ。気を抜くと転びそうだし、自転車に乗っていると舌を噛みそうになる。
眩しさに目を細め、東に向かって歩くと、両親の両親―――あるいは、さらにその親―――世代の人たちが作ったらしい遊具がひっそりと並ぶ。
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