ミツルギ

3/20
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 乗れば壊れそうな軋むブランコ。左右の重さの違う歪んだシーソー。腰ほどの高さのある、ベンチのような丸太の木。女の子がおままごとの舞台にしている木製の机―――とはいっても、ただの大きな切り株だが―――などなど。掘り起こして作られた小ぶりな砂場もあったが、これは野生動物のトイレにされているため、遊ぶ子供は居ない。  壊れていないから、今も尚、子供たちに親しまれながら其処に鎮座している。  その「遊具の廃墟」と子供たちが呼ぶ公園を横目にさらに進むと、小さな丘を切り開いて作っただろう抜け道が現れる。  学校まで田畑を迂回しなくて済む様にと切り開かれたのは、少なくとも三十年以上前だ。この道だけは昼間でも薄暗いので、ふわりと灯が一つ灯されていた。その明かりが、ゆらりと濃い影を作り出していて、冷やりとした空気に背筋が粟立つのを感じる。  ぞくりとするほど濃い陰の中、灯のちょうど真下に小さな地蔵が佇んで笑っていた。村の中に同じような地蔵が五つあるらしいが、何度探しても、三つまでしか見つけられないのは、この村のちょっとしたミステリーだった。影が動くと地蔵の表情が変わったように見えて、抜け道を足早に駆け抜ける。  肝試しが出来そうなこの抜け道の先には、緩やかな坂が続く。周囲を見回してみると畑も同じように波打っていた。真っ直ぐに並ぶ緑のラインが朝陽に照らされて、風に波打つときらきらと輝いている。何もない村に飽いていたが、広がるこの景色だけは本当に綺麗だなといつも思う。     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!