1人が本棚に入れています
本棚に追加
「明るくなったら、また探しに行きましょう。ね?」
朝起きると、まずは『ミツルギ』の下に行った。いつもの待ち合わせの時間が過ぎると、声を上げながら村中を探し回った。
次の日も、その次の日も。
依然として、潤ちゃんは見つからなかった。もしかしたら本当に、村を出て行ってしまったのかもしれないと、そんな思いが首を擡げ始めて、心にぽっかりと穴が開いたような気持だった。
「違う・・・違うよね、潤ちゃん・・・」
毎日ずっと、何をしても、潤ちゃんのことが頭から離れなかった。こんなに長く会わずにいたのは、出会ってから初めてのことだなと空を見上げると、蒼さに涙が滲む。
心配は、寂しさに変わった。信じている気持ちは、虚しさを引きつれてきた。
潤ちゃんと過ごしていた毎日は、他愛も無く、そして特別だったのだと苦しいほど痛感した。
一緒に居て、同じ時間を過ごして、笑って、泣いて、怒って喧嘩して、また仲直りして。
沢山の時間を二人で過ごしていた。ずっと変わらないと思っていた心を、風が浚う。
どれ程、愛しく特別なことだったのか。気づいた喜びは、そのまま失くしたことへの後悔へと変わっていった。
「どこに行ってしまったの、潤ちゃん・・・」
最初のコメントを投稿しよう!