ミツルギ

9/20
前へ
/20ページ
次へ
「明るくなったら、また探しに行きましょう。ね?」  朝起きると、まずは『ミツルギ』の下に行った。いつもの待ち合わせの時間が過ぎると、声を上げながら村中を探し回った。  次の日も、その次の日も。  依然として、潤ちゃんは見つからなかった。もしかしたら本当に、村を出て行ってしまったのかもしれないと、そんな思いが首を(もた)げ始めて、心にぽっかりと穴が開いたような気持だった。 「違う・・・違うよね、潤ちゃん・・・」  毎日ずっと、何をしても、潤ちゃんのことが頭から離れなかった。こんなに長く会わずにいたのは、出会ってから初めてのことだなと空を見上げると、蒼さに涙が滲む。  心配は、寂しさに変わった。信じている気持ちは、虚しさを引きつれてきた。  潤ちゃんと過ごしていた毎日は、他愛も無く、そして特別だったのだと苦しいほど痛感した。  一緒に居て、同じ時間を過ごして、笑って、泣いて、怒って喧嘩して、また仲直りして。  沢山の時間を二人で過ごしていた。ずっと変わらないと思っていた心を、風が浚う。  どれ程、愛しく特別なことだったのか。気づいた喜びは、そのまま失くしたことへの後悔へと変わっていった。 「どこに行ってしまったの、潤ちゃん・・・」     
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加