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僕には兄がいる。
特になんの特徴があるとは言えないが、世間から見ても、何も変わらない兄弟だ。
そんな兄に僕は恋をしてしまった。
「おはよう雛人(ひなひと)」
考え事をしながら歩く僕に優しい声が聞こえた。
「お…おはよう綾人」
その優しい声の主は僕の兄である美月綾人(みつきあやひと)だった。
「呼び捨てはないだろ?お兄ちゃんっていい加減呼ばないのかよ」
綾人にそう言われた雛人は恥ずかしくなり綾人を邪険にしながら言った。
「俺はもうそんな年じゃないんだ!なんて呼んだってお…俺の勝手だろ?」
そう心にもない事をいいながら家を飛び出した。
「行ってらっしゃーい」
そんなことを言われながらでも見送る綾人に胸が痛くなった。
僕と綾人の年齢はかなり離れている。
10歳以上離れているから本当の兄弟ではないなんて誰が見たって気づく。
親は僕達だけを置いて先に天国へと旅立ってしまった。
それだからこそ、唯一無二の家族を壊すなんて出来ない。
たった僕の一時的な感情で家族を壊せない。
けれど、僕の感情は止まないどころか日に日に激しくなるばかりだ。
こんなむしゃくしゃした気持ちを綾人は知らないんだと思うと僕は苛立ちがこみ上げてくる。
「おはよう」
「おはよう!」
色々考えているうちに学校に着いたみたいだ。
「また考え事?」
「あぁ…」
僕に話かけたこの男は幼なじみの相津勇気(あいづゆうき)幼稚園からの幼なじみで心配性な男だ。
「考え事もほどほどにしなよ!」
そう言われた雛人はコクリと頷き自分の席に座った。
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