第2章 必然は未知

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あの雨の日から幾月はケーキに伝えられない愛情を注ぐようになりケーキの味は一段と美味しくなりそれが噂となり一躍有名店になった。 その頃には男の子も人混み紛れながらケーキを買いに来ていた。 そんな姿を見た幾月は嬉しくなりますます美味しいケーキを作るようにしていた毎日が続いたある日の朝、幾月がお店の準備をしていると、あの男の子が外から幾月の店を眺めていた。 その姿をみた幾月の目には男の子の哀しい顔が映った。 そして、幾月は意志とは関係なく体が先に動いており、その見つめていた男の子の方へと足を進めていた。 「どうしたんですか?」 幾月はとっさに声をかけてしまっていた。 なんだか自分の言うことが聞かないように身体は正直に動いていた。 すると、その男の子は驚いていた。 「はぁっ!」 すると、幾月はまた自然と話し始めた。 「どうしたんですか?私のお店ばかりずーっと眺めていて」 幾月はこの男の子と話しながら少し味わった事のない気持ちに襲われていた。 「(なんだろ…このモヤモヤした気持ち、胸の奥が酷く熱くなる感覚…病気?!)」 すると、その男の子は逃げるようにして立ち去った。 幾月は先程の鼓動の熱さが気になっていた。 夜になり、その鼓動の熱さはいつの間にか消えていた。 いつも通り幾月は一生懸命ケーキを作っていると、窓に朝の男の子が見えた途端、朝と同じ胸が高鳴り始めた。 「(なんだ…なんで胸の鼓動がいつも強く激しく叩いている…あの男の子が訪れた時だけ…)」 そう思いながら幾月の足は無意識に男の子の元へと走りだしていた。
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