若しも今、この肩の荷物を降ろしても良いのなら。

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「君は負け組なんや。」 その声に目を開いたら、暗い暗い闇の中で横たわっていた。 暑くもなく、寒くもなく。野内なのか、野外なのか。それすら解らない。ただ一つ、他人の気配はまるで無い。 その時だ。遠くから、ゆらゆら揺れる灯を見つけて上半身を起こした。それは段々、段々と此方へ近づいて来る。 私の前まで来ると、その男性(ひと)はピタリと足を止めた。ランプを持った銀髪の…ニヤニヤ微笑う人。 「愛花(まなか)ちゃん、おはよーさん。」 「………。」 男性にしては甲高い声。胡散臭い関西弁だと感じた。私は座ったまま、彼を下から上まで見つめる。と、彼はランプを置いて膝を曲げた。 「初めまして。ギン(ぎん)言います。」 「…初めまして。」 「此処が何処だか解る?」 私は黙って首を左右に振る。 「此処はなぁ、境界線。君は今、生き霊になりかかってるんよ。」 「生き霊…?」 「せやで。胸のあたりが少し苦しいんとちゃうん?」 言われてみて初めて気がついた。苦しい…と言うより、重たい。とても立ち上がれそうにはないだろう。 「心当たり、無い?」 「………。」 私は黙る。ただ黙って目の前の人を見つめる。
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