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そして彼が彼女を探し始めてから何ヶ月かが経ちました。友人は心配して大学に来なくなった彼と定期的にコンタクトを取っていましたが、食事も禄に喉を通らなかったようで、目に見えてやせ細ってしまったそうですよ。しかしある日、そんな彼に信じられないことが起こります。なんと、街中で少女の姿を目にしたのです。自分の目を疑いながらも彼は必死に彼女に走り寄りますが、想い虚しく彼女は人混みに消えてしまいました。激しく意気消沈し更にやせ細る彼でしたが、その日から不思議なことが起こり始めます。なんと、夢の中に彼女が出てくるようになったのです。それも毎日。夢の中だけれど、写真に写っていた場所で毎日彼女と会えるようになった~と、久しぶりに大学に顔を出した彼は、それはそれは嬉しそうに友人に話していたそうですよ。しかし幸福そうな表情とは裏腹に、この頃になると彼の痩せ方は普通ではなかったようで、顔色も悪く大病人の様になっていました。
それから数週間は彼も大学に通い、表面上は何事もなく過ぎて行きました。しかし、ある時またパタット大学に来なくなり、今度は連絡も付かなくなってしまったんです。不信に思った友人は彼の知り合い何人かと、一人暮らしをしている彼のアパートを訪ねました。中はシンと静まり返っていて、インターフォンを押しても反応は無い。事態を重く見た友人達は、管理人の方にお願いして鍵を開けてもらい、中に押し入りました。彼の身を案じて大声で名前を呼びながら部屋の奥へと進んだ友人たちが見たものは、意外にも布団をかぶりベッドで眠る彼の姿だったそうです。これには一同脱力!何事も無かったことへの安心や、こんなにも気を揉ませた彼への腹立ちなどをそれぞれ口にし合っていたようです。……でも、ここで一人がおかしなことに気付きます。突然の来訪者がそれなりに煩くしいても、一向に起きる気配がない。それだけならまだしも、時折とても苦しそうな表情を浮かべていたのです。
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