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初めての他人の侵入に驚いているのをいいことに遼は口内を蹂躙する。息さえ奪うような勢いのある口付けだった。
健二には初めてのキスの味はよくわからなかった。それよりも他人の唇が熱くて、健二の中の予想していたキスの甘い幻想を吹き飛ばした。想像よりずっと熱くて、息ができない。苦しい。胸にも熱が移ったようでじりじりと焼けるように痛んだ。
今更、何で、と誰かを恨みたくなるようなタイミングだ。もしこの世に神様が居るんだとしたら、こんな目にあうくらい悪いことを健二がしたというんだろうか。あんまりだと思った。
「はなせ…っ」
健二は遼の胸を押し、無理矢理唇を離す。力や体格は健二が勝っているのに、押しのけるのは容易でなかった。頭の中に入ってくる雑念は健二の判断を鈍らせる。
「はっ…」
唇を離し、息を吐いた男は恐ろしいほど色っぽかった。部員に冷たいと評される面なのに目だけはぎらぎらと輝いていた。肉付きの薄い唇が濡れて、一層赤く見えた。ゆっくり唇が開く。
「それが抵抗か。……なめんな」
唸るような低い声が健二をなじるも健二は動けなかった。
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