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すでに日は落ちていた。暗い教室で布擦れの音だけが響く。
行為を終えた後、ぼんやりとして動かない健二とは対照的に遼はさっさと服の乱れを正した。
スラックスは遼のそばにある。だからといっても届かない距離ではない。ただ、動くのが億劫で、尻に今だ入っているかのような異物感とひりひりと刺すような痛みが余計に気力を奪っていく。
「健二」
呼びかけに顔を上げると身支度を整えた遼が健二の制服を持っていた。ぐいっと差し出される。
「あ、ああ」
身体を起こして、どうにか受け取るが、健二は動かない。舌打ちをする音が聞こえたが、どうでもよかった。
「さっさと着替えろよ。出るぞ」
誰も待ってくれなんて言っていない。放っておいて欲しい。大体何故こんなことになったんだろうか。部活をやめると言っても、どうでもよさそうだったのに、途中から遼は怒り出して、こんなことになった。わけが分からない。女王様はきまぐれだ。きっと新しくバッテリーを組んだ相手は苦労する。
「……先に出ろよ。お前部活抜けてきたんだろ。今頃、南沢泣いてんぞ。お前を怒らせたのかってさ」
遼に会話を中断された南沢を思い出して、気の毒になる。
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